釉薬計算の教え方
教室や勉強会のための全6回。原料と三角座標のテストピースから、ゼーゲル式の両方向の計算、釉薬の欠陥までを扱います。各回に計算例、Glazecalc での手順、印刷用のワークシート、確認の質問があります。
この教材について
この教材は、釉薬計算を教えるすべての人のためのものです。学校、陶芸教室、現役の陶芸家の勉強会、ひとりで学ぶ陶芸家にも使えます。全6回で、各回に目標、準備するもの、実際の原料を使った計算例、Glazecalc での手順、ワークシート、確認の質問があります。
各回の順序は、公表された勉強会にならっています。茨城県工業技術センターの陶磁器釉薬技術研究会で、2015年度に若手陶芸家など12名を対象に6回の勉強会を開き、その内容を研究報告にまとめています。その後に笠間陶芸大学校で行われた研修では、42種、90種、78種の釉薬のテストピースを作る3つの課題があり、どれも酸化焼成と還元焼成の両方で焼きました。Glazecalc は、同センターとも同校とも関係がありません。公表された内容の順序にならい、出典を下に示しました。本文、計算例、ワークシートは私たちが作ったものです。ほかの国の講座も、ほぼ同じ順序で同じ段階を教えています。トルコの Bilecik Şeyh Edebali 大学の SCT305、米国の Glendale Community College の ART 195、ドイツのラインラント=プファルツ州の陶芸専門学校の教育課程、台湾の 李堅萍 による2006年の教員向け論文です。
| 回 | 内容 | Glazecalc で使うもの |
|---|---|---|
| 1 | 原料とその働き、三角座標のテストピース | 原料、テストピースのブレンド(三角座標) |
| 2 | 化学の基礎: 元素、化学式、モル | 原料のページ |
| 3 | ゼーゲル式の読み方、シリカ・アルミナの図 | 調合のページ、Stull チャート |
| 4 | 調合からゼーゲル式へ | ゼーゲル式の求め方 |
| 5 | ゼーゲル式から調合へ | 目標から調合を求める |
| 6 | 素地と釉薬の欠陥 | 限界値、比較 |
使い方
- 各回は約2時間です。第4回と第5回では電卓と、2人に1台、Glazecalc を開けるパソコンかスマートフォンが必要です。
- 計算例には、日本で買える原料と、Glazecalc の標準ライブラリの数値を使っています。福島長石、石灰石(炭酸カルシウム)、カオリン、珪石です。お使いの販売店の分析値があれば、原料のページに追加してください。数値は変わりますが、方法は同じです。
- 焼成は SK 8、公称 1250 °C (2282 °F) です。教室で使うコーンに合わせてください。SK の番号については「SK コーンでの焼成」で説明しています。
- ワークシートやテストピースの配置図を印刷するには、このページをブラウザーから印刷します。調合、ブレンド、メモの保存には無料のアカウントが必要です。
第1回、第3回、第6回は実習です。乾いた原料を量り、焼成します。原料を量る前に「いちばん大切な習慣」を読んでください。乾いた釉薬の粉じんが、いちばんの危険です。
第1回: 原料と三角座標
乾いた原料はそっと量り、掃除は湿式で行い、粉末が乾いている間は顔に合った防じんマスクを着用してください。先に「いちばんの危険: 粉じん」と「防じんマスク」を読んでください。
目標
- 釉薬の中の3つの働き、ガラス形成成分、媒溶剤、安定剤を言えるようにする。
- よく使う4つの原料を、持ち込む酸化物で分ける。
- 三角座標の調合試験を組み、焼けたテストピースを地図として読む。
準備するもの
- 福島長石、石灰石、カオリン、珪石を各1袋。または教室にある原料。
- 下の三角座標の配置図を印刷したもの。三角形1つにつき、1人21枚のテストピース。
- 以前に焼いた三角座標のテストピースがあれば、回して見せます。
計算例
Glazecalc のライブラリにある各原料の分析値は、焼成後に残る酸化物を示します。灼熱減量(LOI)は焼けて抜ける分です。
| 原料 | SiO₂ | Al₂O₃ | K₂O | Na₂O | CaO | LOI | 働き |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 福島長石 | 65.4 | 19.53 | 10.76 | 3.77 | 0.49 | 0.18 | 媒溶剤。アルミナとシリカも持ち込む |
| 石灰石 | – | – | – | – | 56.03 | 43.97 | 媒溶剤(カルシウム) |
| EPK Kaolin | 45.7 | 37.4 | 0.33 | 0.06 | 0.18 | 13.9 | 安定剤: アルミナの主な供給源 |
| 珪石 | 100 | – | – | – | – | – | ガラス形成成分 |
SK 8 では、長石だけなら溶けて硬いガラスになりますが、石灰石だけ、珪石だけでは溶けません。混ぜると、どれか1つよりずっとよく溶けます。どこでよく溶けるかを示すのが三角座標です。下の配置図では3つを20%ずつ変え、どのテストピースにもカオリンを10%入れています。
| 店名 | 取扱品 | 確認した容量 | 確認した原料(店での名称) |
|---|---|---|---|
| 陶芸百貨店 埼玉県上尾市 | 釉薬原料、酸化物、粘土、調合済みの釉薬、窯 | 福島長石; 釜戸長石; 福島硅石; 天草陶石; 合成土灰 | |
| 丸二陶料 | 釉薬原料 | 1 kg、25 kg、30 kg | 三雲長石; 特級釜戸長石; 極上福島長石 |
| ヤマニファーストセラミック 島根県松江市 | 釉薬原料、調合済みの釉薬 | 特級福島長石; 特級釜戸長石; 三雲長石; 霞石閃長石(ネフェリン長石) |
確認した出典: tougei-dept.com 02-maruni.sun.bindcloud.jp yamani-fc.jp.
Glazecalc では
- 原料のページで各原料を開くか、Fukushima Feldspar のような公開ページを開き、持ち込む酸化物を書き留めます。
- 調合を3つ作ります。福島長石 90 とカオリン 10、石灰石 90 とカオリン 10、珪石 90 とカオリン 10 です。テストピースのブレンドで 三角座標(調合3件) を選び、行数を 6 にします。21枚で、下の配置図と同じです。
- 1枚あたりの量を決め、印刷 で計量するものを印刷します。焼成後、気に入ったテストピースを、テストピースの図から調合として保存します。
ワークシート
| 原料 | 持ち込む酸化物 | ガラス形成成分・媒溶剤・安定剤のどれか | LOI (%) |
|---|---|---|---|
| 福島長石 | |||
| 石灰石 | |||
| カオリン | |||
| 珪石 |
確認
- アルミナの大部分を持ち込む原料はどれですか。釉薬にアルミナが必要なのはなぜですか?
- 三角形の石灰石の角が、それだけでは溶けないのはなぜですか?
- 三角形のどこでいちばんよく溶けましたか。それはどの角に近いところでしたか?
第2回: 必要な化学の基礎
目標
- 化学式を読む: SiO₂、CaO、Al₂O₃、CaCO₃。
- 原子量から分子量(モル質量)を求める。
- グラムをモルに、モルをグラムに直す。
準備するもの
- 1人1枚の周期表と電卓。
- 下の表の原子量(IUPAC の標準値。Glazecalc が使う値です)。
計算例
| 元素 | 記号 | 原子量 |
|---|---|---|
| 酸素 | O | 15.999 |
| 炭素 | C | 12.011 |
| ナトリウム | Na | 22.99 |
| アルミニウム | Al | 26.982 |
| ケイ素 | Si | 28.085 |
| カリウム | K | 39.098 |
| カルシウム | Ca | 40.078 |
化学式は原子の数を表します。SiO₂ はケイ素1つと酸素2つなので、1モルの重さは 28.085 + 2 × 15.999 = 60.083 g です。Al₂O₃ は 2 × 26.982 + 3 × 15.999 = 101.961 g です。CaO は 56.077 g、石灰石 CaCO₃ は 100.086 g で、Glazecalc のライブラリでは 100.08 に丸めています。
モルは、1ダースのような数の単位です。何の分子でも同じ数を表します。モルはグラム ÷ モル質量です。
- 珪石 25 g は、25 ÷ 60.083 = 0.416 mol の SiO₂ です。
- 石灰石 20 g は 20 ÷ 100.08 = 0.200 mol です。窯の中で二酸化炭素(CO₂、44.009 g/mol)が抜け、0.200 mol の CaO が残ります。その重さは 0.200 × 56.077 = 11.2 g です。この減った分が LOI で、43.97% です。
Glazecalc では
ワークシート
| 酸化物または原料 | 化学式 | モル質量 (g/mol) | グラム | モル |
|---|---|---|---|---|
| シリカ | SiO₂ | 30 | ||
| アルミナ | Al₂O₃ | 10 | ||
| 酸化カルシウム | CaO | 5 | ||
| 石灰石 | CaCO₃ | 15 |
確認
- SiO₂ 1モルは何グラムですか。どのように求めますか?
- 石灰石 20 g が、焼成後の釉薬に 20 g 残らないのはなぜですか?
- 酸化物を、グラムではなくモルで比べるのはなぜですか?
第3回: ゼーゲル式の読み方
釉薬に色を付けるには着色剤を量ります。基礎釉の原料より注意が必要なものもあります。先に「特に注意が必要な原料」を読んでください。
目標
- ゼーゲル式(UMF)の3つの列、媒溶剤、安定剤、ガラス形成成分を読む。
- シリカ・アルミナの図に釉薬を置き、その図で分かること、分からないことを知る。
- 市販の釉薬に段階的に色を付け、記録する。
準備するもの
- 下のゼーゲル式を大きく書いたもの。
- 市販の透明釉と、弁柄などの着色剤。
計算例
第4回の釉薬、福島長石 45、石灰石 20、カオリン 10、珪石 25 のゼーゲル式は次のとおりです(Glazecalc の値を丸めたもの)。
| 媒溶剤 (RO, R₂O) | 安定剤 (R₂O₃) | ガラス形成成分 (RO₂) |
|---|---|---|
| K₂O 0.18 | Al₂O₃ 0.43 | SiO₂ 3.45 |
| Na₂O 0.10 | ||
| CaO 0.72 |
- 媒溶剤の合計が1になります。これがゼーゲル式の決まりです。ほかの数値は、媒溶剤1モルあたりのモル数です。
- シリカ・アルミナ比は 3.45 ÷ 0.43 で、約8です。光沢のある釉薬によくある値です。
- 媒溶剤の大部分はカルシウムで、日本の多くの石灰釉と同じです。
横軸にシリカ、縦軸にアルミナをとった図では、各釉薬が1つの点になります。ゼーゲルの試験も Stull の1912年の図もこの種類で、釉性状図は教室で焼いたテストピースをこの図に描き込んだものです。Glazecalc の調合のページは Stull チャートを描き、この釉薬は光沢の領域に入ります。Stull の領域は、彼自身の媒溶剤と焼成から作られたものです。目安であって、予測ではありません。下のゼーゲル座標を使えば、教室で自分たちの焼成での図を作れます。
横軸はシリカ(SiO₂)でおよそ1から7まで、縦軸はアルミナ(Al₂O₃)で0から1まで、どちらもゼーゲル式の値です。左からくさび形の領域が扇状に広がります。左上が未溶融、次にマット、次に半マットです。その右の影のない部分が光沢で、その中の点線は Stull の釉薬が最も光沢のあった所です。焼成不足は右下で、アルミナが少なくシリカが多い所です。チャートの下の方と左側にある斜線は、Stull のテストに貫入が出た所です。
- 点線: Stull の釉薬が最も光沢のあった所。
- 斜線: 貫入が出た所。
目安であり、予測ではありません。R. T. Stull(Transactions of the American Ceramic Society, 1912)は、媒溶剤を K₂O 0.3 と CaO 0.7 に固定して、およそオルトンコーン 11 で焼成しました。ほかの媒溶剤や焼成では領域が動きます。また、焼成不足のためだけにマットになっている釉薬でも、光沢の領域にプロットされることがあります。領域は Glazy の描き方に従っています。
調合の分からない市販釉では、Glazecalc はゼーゲル式を計算できません。代わりに、着色剤を 100 の外に加えます。乾いた釉薬 100 g に酸化鉄を 1、2、3 g 加え、1枚ずつ酸化焼成と還元焼成で焼きます。
Glazecalc では
- 調合のページに上の調合を入力し、ゼーゲル式 と Stull チャート を見ます。
- 珪石を 25 から 35 に変え、点が右へ動くのを見ます。
- 調合の分かっている基礎釉なら、着色剤を外割りの添加物にし、テストピースのブレンドのラインで段階的に変えます。
ワークシート
| テストピース | 着色剤(100 g あたりの g) | 酸化焼成: 見た目 | 還元焼成: 見た目 |
|---|---|---|---|
| 1 | 0 | ||
| 2 | 1 | ||
| 3 | 2 | ||
| 4 | 3 |
確認
- ゼーゲル式で、合計が1になるのはどの列ですか?
- この釉薬のシリカ・アルミナ比はいくつですか。それから何が分かりますか?
- 図の光沢の領域に入る点でも、自分の窯ではマットになることがあるのはなぜですか?
第4回: 調合からゼーゲル式へ
目標
- 調合からゼーゲル式を手で計算する。
- Glazecalc 自身の計算と照らし合わせる。
準備するもの
- ワークシート 4、第1回の4つの分析値、電卓。
計算例
調合は、福島長石 45、石灰石 20、EPK カオリン 10、珪石 25 です。各量をグラムとして読みます。原料ごとに、グラム × 酸化物の百分率 ÷ 100 ÷ そのモル質量 でモル数が出ます。表は主な酸化物だけです。Glazecalc は微量成分(カオリンの鉄とチタン、長石のマグネシウム)も数えます。
| 原料 | グラム | K₂O | Na₂O | CaO | Al₂O₃ | SiO₂ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 福島長石 | 45 | 0.0514 | 0.0274 | 0.0039 | 0.0862 | 0.4898 |
| 石灰石 | 20 | – | – | 0.1998 | – | – |
| カオリン | 10 | 0.0004 | 0.0001 | 0.0003 | 0.0367 | 0.0761 |
| 珪石 | 25 | – | – | – | – | 0.4161 |
| 合計 | 100 | 0.0518 | 0.0275 | 0.2041 | 0.1229 | 0.9820 |
媒溶剤の合計は 0.0518 + 0.0275 + 0.2041 + 0.0014(マグネシア)= 0.2847 mol です。すべての合計をこれで割ります。
- K₂O 0.0518 ÷ 0.2847 = 0.18。Na₂O 0.10。CaO 0.72。
- Al₂O₃ 0.1229 ÷ 0.2847 = 0.43。
- SiO₂ 0.9820 ÷ 0.2847 = 3.45。
これが第3回のゼーゲル式です。
Glazecalc では
- 調合のページに調合を入力します。
- ゼーゲル式の求め方 を開きます。この調合の数値で、グラム、各原料中の各酸化物のモル数、合計、媒溶剤での割り算という手順が示されます。
- 1行ずつワークシートと比べます。次に量を1つ変え、変わる列だけを計算します。
ワークシート
| 原料 | グラム | K₂O | Na₂O | CaO | Al₂O₃ | SiO₂ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 合計 | ||||||
| ÷ 媒溶剤 |
確認
- 仕込みの量を変えても、同じゼーゲル式になるのはなぜですか?
- カオリンはどの酸化物を持ち込みますか。ここで最も大事なのはどれですか?
- 石灰石の LOI がゼーゲル式に入らないのはなぜですか?
第5回: ゼーゲル式から調合へ
目標
- 目標のゼーゲル式に合う原料を選び、それぞれの量を計算する。
- 「目標から調合を求める」を使い、どれだけ近いかを説明する。
準備するもの
- 下の目標、ワークシート 5、電卓。アカウントのある Glazecalc。
計算例
目標は K₂O 0.2、Na₂O 0.1、CaO 0.7、Al₂O₃ 0.4、SiO₂ 4.0 です。原料は次の順に、それにしか持ち込めない酸化物のために使います。
- 長石で、カリとソーダを。 福島長石1単位(536.8 g。媒溶剤1モルを含む重さ)は、K₂O と Na₂O を合わせて 0.94 mol 持ち込みます。目標は 0.3 なので、0.3 ÷ 0.94 = 0.319 単位で 171.4 g です。同時に CaO 0.015、Al₂O₃ 0.328、SiO₂ 1.865 も入ります。
- 石灰石で、残りのカルシウムを。 0.7 − 0.015 = 0.685 mol × 100.08 = 68.6 g。
- カオリンで、残りのアルミナを。 0.4 − 0.328 = 0.072 mol。EPK カオリンは 272.6 g に Al₂O₃ を1モル含むので 19.6 g で、SiO₂ 0.149 も入ります。
- 珪石で、残りを。 4.0 − 1.865 − 0.149 = 1.986 mol × 60.083 = 119.3 g。
合計は 379.0 g です。百分率では、福島長石 45.2、石灰石 18.1、カオリン 5.2、珪石 31.5 になります。カリとソーダの比は長石で決まるので、この調合では K₂O 0.195、Na₂O 0.104 になります。目標に近いものの、ぴったりではありません。
Glazecalc では
- 目標から調合を求めるを開き、ゼーゲル式(モル数で、媒溶剤の合計を1とする) を選んで目標を入力します。
- 原料 に福島長石、石灰石、EPK カオリン、珪石を入れ、求める を選びます。
- 結果は福島長石 44.9、石灰石 18.2、カオリン 5.6、珪石 31.3 で、各酸化物がどれだけ近いかの表が付きます。手計算と比べてください。ソルバーは微量成分もすべて数え、4つの原料でできるいちばん近い組み合わせを探します。
- 新しい調合として開く を選び、調合のページで確かめます。
ワークシート
| 手順 | 原料 | どの酸化物のため | 必要なモル数 | グラム | ほかに持ち込むもの |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | |||||
| 2 | |||||
| 3 | |||||
| 4 |
確認
- 長石をいちばん先に計算するのはなぜですか?
- この4つの原料で K₂O 0.2、Na₂O 0.1 ちょうどにできないのはなぜですか?
- マグネシアを入れるには、どんな原料を加えますか?
第6回: 素地と釉薬の欠陥
焼成した釉薬から、食べ物や飲み物に金属が溶け出すことがあり、見た目が完璧でも起こります。バリウムの多い釉薬、銅を含む釉薬、鉛を含むすべての釉薬は溶出することがあります。何が溶け出すかは、焼成した器の溶出試験でしか分かりません。計算では分かりません。「食品の安全」と「特に注意が必要な原料」を読んでください。
目標
- 素地の収縮率と吸水率を測る。
- よくある欠陥、その主な原因、最初に試す対処を言えるようにする。
- 器を危険にする欠陥はどれかを知る。
準備するもの
- お使いの素地の試験片。濡れているうちに 100 mm 間隔で印を付けたもので、焼成したものとしていないもの。
- 欠陥のあるテストピースがあれば: 貫入、縮れ(はじき)、ピンホール、流れ。
計算例
- 収縮率: (印の長さ − 焼成後の長さ)÷ 印の長さ × 100。100 mm 間隔の印が焼成後に 88 mm なら、収縮率 12% です。
- 吸水率: (吸水後の重さ − 乾燥重量)÷ 乾燥重量 × 100。焼成した 50.0 g の試験片が吸水後 50.6 g なら 1.2% です。
| 欠陥 | 主な原因 | 最初に試す対処 |
|---|---|---|
| 貫入 | 釉薬が素地より大きく縮む | K₂O と Na₂O を減らし、カルシウム、マグネシア、ホウ素を増やす |
| 剥離(シバリング) | 釉薬の縮みが素地よりずっと小さい | K₂O と Na₂O を増やす |
| 流れ | アルミナが少なすぎる、または厚すぎる | アルミナを増やす、薄く掛ける |
| 縮れ(はじき) | 素焼きのほこり、または厚く掛けてひび割れた | 素焼きをきれいにする、薄く掛ける |
| ピンホール | ガスの跡がふさがらなかった | 焼成の最後にねらしを入れる、薄く掛ける |
各欠陥については「釉薬の適合と欠陥」で、貫入を調べる氷水試験とともに説明しています。貫入や剥離のある器は、食べ物や飲み物に使わないでください。
| 器の種類 | 鉛 | カドミウム |
|---|---|---|
| 液体を満たすことのできないもの、又は深さ2.5 cm未満のもの | 8 µg/cm² | 0.7 µg/cm² |
| その他の容量1.1 L未満のもの(加熱調理用器具を除く) | 2 µg/mL | 0.5 µg/mL |
| その他の容量1.1 L以上3 L未満のもの(加熱調理用器具を除く) | 1 µg/mL | 0.25 µg/mL |
| その他の容量3 L以上のもの(加熱調理用器具を除く) | 0.5 µg/mL | 0.25 µg/mL |
| 加熱調理用器具(深さ2.5 cm以上) | 0.5 µg/mL | 0.05 µg/mL |
確認した出典: caa.go.jp.
Glazecalc では
- 調合のページで、自分の釉薬の 限界値 と、計算上の熱膨張を見ます。
- 調合をコピーし、長石の一部を石灰石に置き換えて比べます。熱膨張はどちらに動きましたか。
ワークシート
| 試験片 | 印の長さ (mm) | 焼成後の長さ (mm) | 収縮率 (%) | 乾燥重量 (g) | 吸水後の重さ (g) | 吸水率 (%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 100 | |||||
| 2 | 100 |
確認
- 釉薬が素地より大きく縮むと、どの欠陥になりますか。最初に試す対処は何ですか?
- 剥離のある器を、決して食器に使ってはいけないのはなぜですか?
- 計算で、釉薬が食品に安全だと分かりますか。何なら分かりますか?
印刷用のテストピース配置図
三角座標の配置図: 42種
21枚の三角形が2つで、テストピースのブレンドの行数 6 の配置と同じです。テストピース 1 が頂点(長石)、下の行は左の石灰石から右の珪石までです。三角形 II は三角形 I の各 100 g に弁柄 1 g を外割りで加えたもので、還元焼成では青磁の方向に向かいます。酸化焼成と還元焼成で焼くと 84 枚です。量は 100 g あたりのグラムです。
| テストピース (I) | テストピース (II) | 福島長石 | 石灰石 | 珪石 | カオリン | I 酸化 | I 還元 | II 酸化 | II 還元 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 22 | 90 | 0 | 0 | 10 | ||||
| 2 | 23 | 72 | 18 | 0 | 10 | ||||
| 3 | 24 | 72 | 0 | 18 | 10 | ||||
| 4 | 25 | 54 | 36 | 0 | 10 | ||||
| 5 | 26 | 54 | 18 | 18 | 10 | ||||
| 6 | 27 | 54 | 0 | 36 | 10 | ||||
| 7 | 28 | 36 | 54 | 0 | 10 | ||||
| 8 | 29 | 36 | 36 | 18 | 10 | ||||
| 9 | 30 | 36 | 18 | 36 | 10 | ||||
| 10 | 31 | 36 | 0 | 54 | 10 | ||||
| 11 | 32 | 18 | 72 | 0 | 10 | ||||
| 12 | 33 | 18 | 54 | 18 | 10 | ||||
| 13 | 34 | 18 | 36 | 36 | 10 | ||||
| 14 | 35 | 18 | 18 | 54 | 10 | ||||
| 15 | 36 | 18 | 0 | 72 | 10 | ||||
| 16 | 37 | 0 | 90 | 0 | 10 | ||||
| 17 | 38 | 0 | 72 | 18 | 10 | ||||
| 18 | 39 | 0 | 54 | 36 | 10 | ||||
| 19 | 40 | 0 | 36 | 54 | 10 | ||||
| 20 | 41 | 0 | 18 | 72 | 10 | ||||
| 21 | 42 | 0 | 0 | 90 | 10 |
ゼーゲル座標: 24種
どのテストピースも媒溶剤は同じで、KNaO 0.2 と CaO 0.8 を福島長石と石灰石から入れます。アルミナは下へ、シリカは右へ増えます。調合は第5回の方法で計算したもので、Glazecalc で求めた各調合のゼーゲル式は、アルミナで 0.01、シリカで 0.06 以内に収まります。各テストピースをシリカとアルミナの図に描き込み、マット、光沢、未熟、流れの領域を自分で描いてください。
| テストピース | Al₂O₃ | SiO₂ | 福島長石 | 石灰石 | カオリン | 珪石 | 酸化焼成 | 還元焼成 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 0.25 | 2.0 | 46.9 | 32.5 | 3.5 | 17.1 | ||
| 2 | 0.25 | 2.5 | 41.8 | 28.9 | 3.1 | 26.2 | ||
| 3 | 0.25 | 3.0 | 37.6 | 26.1 | 2.8 | 33.5 | ||
| 4 | 0.25 | 3.5 | 34.3 | 23.7 | 2.5 | 39.5 | ||
| 5 | 0.25 | 4.0 | 31.4 | 21.7 | 2.3 | 44.5 | ||
| 6 | 0.25 | 4.5 | 29.0 | 20.1 | 2.2 | 48.7 | ||
| 7 | 0.35 | 2.0 | 44.3 | 30.6 | 13.9 | 11.3 | ||
| 8 | 0.35 | 2.5 | 39.6 | 27.4 | 12.4 | 20.5 | ||
| 9 | 0.35 | 3.0 | 35.9 | 24.8 | 11.2 | 28.0 | ||
| 10 | 0.35 | 3.5 | 32.8 | 22.7 | 10.3 | 34.2 | ||
| 11 | 0.35 | 4.0 | 30.2 | 20.9 | 9.5 | 39.5 | ||
| 12 | 0.35 | 4.5 | 28.0 | 19.4 | 8.8 | 43.9 | ||
| 13 | 0.45 | 2.0 | 41.9 | 29.0 | 23.1 | 6.1 | ||
| 14 | 0.45 | 2.5 | 37.7 | 26.1 | 20.8 | 15.4 | ||
| 15 | 0.45 | 3.0 | 34.3 | 23.7 | 18.9 | 23.0 | ||
| 16 | 0.45 | 3.5 | 31.5 | 21.8 | 17.4 | 29.4 | ||
| 17 | 0.45 | 4.0 | 29.1 | 20.1 | 16.0 | 34.8 | ||
| 18 | 0.45 | 4.5 | 27.0 | 18.7 | 14.9 | 39.4 | ||
| 19 | 0.55 | 2.0 | 39.7 | 27.5 | 31.4 | 1.5 | ||
| 20 | 0.55 | 2.5 | 35.9 | 24.9 | 28.4 | 10.8 | ||
| 21 | 0.55 | 3.0 | 32.8 | 22.7 | 26.0 | 18.5 | ||
| 22 | 0.55 | 3.5 | 30.2 | 20.9 | 23.9 | 25.0 | ||
| 23 | 0.55 | 4.0 | 28.0 | 19.4 | 22.1 | 30.5 | ||
| 24 | 0.55 | 4.5 | 26.1 | 18.1 | 20.6 | 35.3 |
Glazecalc のテストピースのブレンドが作るのは 3 から 66 枚の三角形と四角形で、この格子は作れません。各テストピースを調合のページで調合として開き、そこから計量表を印刷してください。
出典
- 吉田博和, 吉田彩美, 寺門秀人, 陶磁器釉薬技術研究会, 茨城県工業技術センター研究報告 第44号 (2015): 全6回の勉強会。
- 茨城県工業技術センター, 陶磁器釉薬技術研究会, 平成27年 成果集: 各回の日程とテーマ。
- 茨城県産業技術イノベーションセンター, 陶磁器用釉薬に関する研修, 令和元年 成果集: 42種、90種、78種の釉薬を酸化焼成と還元焼成で焼く研修の課題。
- 岡部弘文, 釉薬計算プログラムの開発, 茨城県工業技術センター研究報告 vol33 (2005): 同センター自身の計算プログラム。
- Bilecik Şeyh Edebali University, SCT305 の講義情報: 第5、6、8週のゼーゲル式。
- 李堅萍, 國立臺北教育大學學報 19(2), 2006, pp. 51–68: 台湾の学校教員向けの釉薬計算。
- Glendale Community College, ART 195 の講義概要: 15週のうち第5〜7週がゼーゲル式。
- Ministerium für Bildung Rheinland-Pfalz, Lehrplan Fachschule Keramikgestaltung (2003), Lernmodul 6, Glasuren.
- 佐賀県陶磁器原料株式会社, 釉薬原料の化学分析表: Glazecalc のライブラリにある福島長石の分析値。
- IUPAC, 標準原子量。Glazecalc の計算が使う値です。